TSUKINAMI project

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 しばらくして、裏口から物音が聞こえてきた。足音は二人分。待ち人が帰ってきたらしい。

「おかえり〜〜!」

 開けられたドアに向かって俺が声をかけると「ただいま」と、予想通り二人分の声が聞こえてきた。

 琉央くんの後ろから中に入ってきた一也が驚いた顔でこちらを見た。

「瀧源さん、」

「おかえり」

 シュンちゃんが言う。そして一也に向かってにっこり笑いかけた。作り笑顔だ。その顔よくないよシュンちゃん。

 少し怯え気味の一也に、俺はすかさず「あのね」と声をかけた。

「ごはん! シュンちゃんが作ってくれたんだよ〜! カズ、なんだかんだ言ってシュンちゃんのご飯初めてじゃない?」

 すると「そうだっけ」と、シュンちゃんが首をかしげる。

「そうだよ! カズにシュンちゃんのご飯おいしいよって紹介したのに、全然作ってくれないんだもん! 嘘つきだと思われるとこだった!」

「それは、ごめんよ。でも……そんなにおいしいかな」

 シュンちゃんは手を動かしながら目を逸らす。

「シュンちゃんのごはんはおいしいよ」俺は言って「ねぇ? 琉央くん」と琉央くんに同意を求める。

「うまい」

「ほら、嘘つけない琉央くんも即答」

「余計なお世話だよ」

 騒々しい俺たちに、一也は「へぇ」と呟いて下を向いた。

 疲れてるところにうるさくしすぎたかな。少し後悔した。けど、今日できることは今日やるに限る。いつまで一緒にいられるのか分からないんだから。俺は一也の顔を覗き込む。

「カズ、今日頑張ったでしょ? だから、一つお祝いってことで。一緒にご飯食べよ」

 俺の言葉に一也は少し困ったように目線を泳がせる。けど、すぐに「うん」と返事をくれた。

 琉央くんと一也が荷物を片付けにいっている間、俺はテーブルに料理を並べて、シュンちゃんは洗い物を進める。

「シュンちゃんのご飯久しぶりだな〜。シュンちゃん、最近忙しかったし、無理ばっかりしてさぁ……」

 俺が呟くと、シュンちゃんはあはは、とから笑いしてから作り笑いをして俺の方を見た。

「心配をかけたね」

 あぁ、また。こうやっていつも。

 シュンちゃんは、俺の言葉を信じてくれないし、その言葉に飛び込んで、頼ってきてくれない。琉央くんに対しても同じだ。

 いつかの夜も、その前の数えきれない場面でそうだったみたいに。

「心配だよ」だとか。「力になりたい」だとか。「無理しないで」だとか。

 俺や琉央くんが放つ、シュンちゃんを気に掛ける言葉や頼ってほしい気持ちは、いつもシュンちゃんの心にちゃんと届くことはないし。

 それが、いつも悲しい。

 シュンちゃんは、心なしか不安そうな顔をしていた。こう言う時、もっと強く共鳴できたら楽なんだけどな。

 何が、どんなふうに不安なのか。

 シュンちゃんの気持ちを少しでも分かってあげられたらいいのに。

 少しして、基地の入り口から琉央くんと一也が戻ってくる。

「先座ってて〜」

 皿を出しながら俺が言うと、琉央くんは「あぁ」と気の無い返事をしてさっさと厨房から出て行った。

 全然聞いてないし。何か違うこと、多分シュンちゃんのこと考えてるな、あれは。

 前言撤回。共鳴しすぎると何考えてるかわかりすぎてムカつくときあるからほどほど (・・・・)が良し。

 一方の一也は、ドギマギしながらこちらを見ている。

「どうした?」と俺が首をかしげると「なにか手伝う?」と尋ねてきた。

 俺は頭を抱える。

「一也マジ超いい子。琉央くんに爪の垢煎じて飲ませたい」

 思わず、俺は本音を漏らした。

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